婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される


 ポロポロと涙が出てくる。泣き顔を見せたくないのに、勝手に涙があふれて止まらない。


「また、君の涙を拭えない……」


 エドの手が、パタリと力なく地面に落ちる音がした。エドの体は光り始め、天に登っていく。私の手もキラキラと光り始めた。頑張ってエドの方に手を伸ばすと、ほんの少しだけエドの手に指先がふれた。まだほんのりと温かい。


 私は指先の温かさを感じながら、キラキラ光る自分の体を見ていた。








 だいぶ時間が経った気がする。私はやっぱりあの明るい光の場所に居た。



 ここも2回目ね。常連にはなりたくないけど、気持ちの良い場所だわ。そういえば1回目の時、私はエドの幸せを願ったのに叶わなかったな。


 でも私、次は諦めない! 今度はエドとどんなに年が離れていても、私はあなたを必ず幸せにする。他の誰にも渡したくない。


 エド、あなたはいつ現れるかわからない私のことを、30年も待ってくれた。だから今度は私があなたを見つけて、あなたと結ばれるその日まで、あなたが私を思い出すまで待ってる。



 エド、待っててね。必ず、幸せにしてあげるから。



 ああ、やっぱりここは眠いな……



 私はゆっくり瞼を閉じた。

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