婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される
俺がしたわけじゃないのにサラが瞳を輝かせてこっちを見るから、変に照れてしまう。
「それでこの国を守った女の子の大好物が苺だったから、3年に1度その女の子のためにお祭りをするんだよ」
俺がそう言うと、サラは不安げな顔をしている。どうしたんだ?と思っていると、俺のズボンをぎゅっと握りながらおずおずと聞いてきた。
「……もう、その悪者、来ない?」
「すまん! この話怖かったか? 今はもうこの国と仲良しの国ばかりだから、襲ってくることは無いぞ! でも安心しろ! サラに何かあっても父さんが」「サラ大丈夫だからな! 誰が襲ってきても、俺がサラを守る!」
エドワード! 俺にかぶせてくるんじゃない! まったく認めるのはしゃくだが、エドワードの言葉を聞いたサラは頬を苺色にして喜んでいる。あっという間に2人で手をつないで、クレープを食べに行ってしまった。
まあ、それでも50年も昔のことだがこの国を襲ってきたキース王国はなくなり、今では我が国の領土になった。俺も時々果物の仕入れで元キース王国の土地に行くが、年老いたその土地の者はみんなキース王国がなくなった事を喜んでいる。そうとうひどい王族だったのだろう。サラが生きているこの時が、平和でなによりだ。
それにしてもあの2人……食べ始めてもどちらかが「クリームついてるよ」「ふいてあげる」だの、なんだか近づけない雰囲気を出すようになってる。え? これいつから? サラ、お父さんがいるの見えてないのか?
ニヤニヤした店主が俺の肩をポンと叩いたが、まだ認めない。