婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される
「サラ! 結界を解いてくれ! サラ!!」


 カタカタと魔法陣を入れた引き出しが揺れている。


「エ、ド……逃げて……」


 馬鹿な私でも引き出しの中にいるものが幻じゃないことが感じ取れた。もう間に合わないだろう。


 キンと結界が破れる音と、扉を開ける音が同時に聞こえた。


「サラ!」


 私の世界は真っ暗になった。




 あ〜やっちゃった〜。
 私って馬鹿! 本当に大馬鹿!


 たぶん私はあのまま召喚した魔獣に、1口で飲み込まれちゃったのでしょうね。しかもあの時結界を破ってドアが開いた気がするから、メイドのマリーやエドには気持ち悪いもの見せちゃっただろうな。


 エドを幻の魔獣でびっくり箱のように驚かすつもりだったけど、ものすごいもの見せちゃった。むしろびっくりしたのは、他ならぬ私なんて自業自得ね!


 それよりあの魔獣は私を食べただけで、ちゃんと消えたのかしら? もしエドワード様やマリーまで傷ついていたら……

 
 どうしよう。2人どころか屋敷に居た人たちがみんな死んでたら。大変なことをしでかしたのに、みんなに謝ることができない。


 私が子供で愛想を尽かされたのに泣いて逃げ出して、挙句の果てに魔術で失敗して目の前で死んじゃうとか。エドワード様が言ったとおりダメすぎるわ。


 
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