婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される
私の父も最初は「俺もそっちの店で働きたい!」とぶつぶつ言ってたけど、どうせじっとしてられない性格だ。美味しい果物を求めて、いろんな土地に行ってしまう。お父さんには私達のお店のメニューに役立つ果物を仕入れてきてもらおう。
どんなメニューにしようか、インテリアはどうするか? いろいろ考えるのは本当に楽しい! いっそ苺専門店にしてしまおうかな?なんて夢中で考えていると、エドが私の頬にキスをした。私が驚いて振り向くとエドは私の手を取り、自分の膝に乗せる。
「ねえ、この自宅の設計図どう思う? 部屋数が多すぎるような……父さんは何考えてるんだ?」
「どれどれ?」
エドは後ろから私を抱きしめるかたちで、設計図を差し出してきた。もう片方の腕は私の腰にぐるりとからまっている。
「たしかに部屋数は多いけど、まあ、たぶん、これは……」
少し前にエドのお父さんからこの部屋の意味を聞いていた私は、思わず口ごもってしまう。もう! エドもなんとなく察してほしい! 私の首筋にキスしてる場合じゃないってば!
「客間にしては多すぎると思うし、店の倉庫は別に借りるし……」
「ほら、その、空き部屋の場所が、ね?」
私は設計図を指差し、空き部屋が私達夫婦の部屋の隣にあるのを教える。
「……ああ! 子供部屋か!」
ようやく気づいたエドはニコニコと「父さんも気が利くな」と笑って、私をぎゅうっと抱きしめた。