婚約破棄寸前の令嬢は、死んだ後に呼び戻される
「夢を……見てたんだ」
「うん? 嫌な夢?」
「あの時の部屋で、サラを呼び戻せなくて、それでサラが死んでる夢も見て……」
あまりにも僕が混乱した事を言ったからだろう。サラは「おいで」と言って僕の頭を胸元にぎゅっと押し付けた。
「ほら、サラは生きてるよ」
押し付けられた胸元からはトクントクンとサラの命の音がする。僕は目を閉じてその幸せの音を聞く。
「エドも生きてる。私も生きてる。ね?」
「ああ、本当だ。僕達は生きてる」
そう言うとサラのお腹のあたりからポコっと小さな音がした。
「あ! この子も生きてるよ〜だって!」
「はは! 本当だ。僕のことを忘れるな〜って言ってるのかな?」
「女の子かもよ?」
「そうだったね。どっちでも嬉しいよ」
僕達の声に応えるように、サラの大きなお腹からポコポコと音がする。ああ、幸せを運んでくる音だ。サラのお腹を優しくなでながら、まだ見ぬ可愛い僕達の子供に伝える。
「絶対に幸せにしてあげるからね」
僕とサラはお互いを確かめ合うように唇を重ね、世界一幸せな気持ちでまた眠りについた。