若旦那様の憂鬱

柊生は綺麗な所作で、頭まで下げてくるので花はびっくりする。

そして、柊生は話し出す。

「花には申し訳ない事をした。
いっ時の気の迷いで、妹とにしてはいけない事をした。
誤って済むような事では無いが…

この邪心が消えて無くなるまで、花に会ってはいけないと、自分を戒めて稽古をしていた。」

頭を下げたままそう柊生は話す。

花は苦しくて悲しくて泣きたくなる。

「…消さないで……私は嬉しかったのに…。」

花は、抑えていた感情が溢れ出し、涙がポロポロとめどなく流れ出して止まらない。

ヒックヒック…としゃくり上げ子供の頃のように泣き出す花に柊生は狼狽える。

嬉しかった?

俺が勝手に…一方的な思いが溢れだして、しでかしてしまった失態なのに……。

「…私、柊君が…好き…。」
泣きながら花が言う。

えっ…?柊生は耳を疑う。

「花、…それはきっと、気の迷いだ。俺が、あんな事を、してしまったから…。」

「違うよ…違う!」
花が駆け寄り、柊生の目の前まで来て同じように冷たい板間に正座する。
< 103 / 336 >

この作品をシェア

pagetop