若旦那様の憂鬱
「分かった。花を信じてる。
明日、迎えに行くから終わったら連絡して。」

また、柊生がぎゅっと抱き締めるから、やっと落ち着きを取り戻そうとした心臓が暴れ出す。

「…はい。」

「花、どうしようか?……離れ難いな。」

「あの、とりあえず……お弁当食べて…冷めちゃうから。」

ふっと柊生が笑って、
「分かった、頂くよ。」

そう言って、やっと離してくれる。

今まで、あまり感情の起伏が分からなかったのに、今日の柊君は特別仕様なんだと思う。

こんなにも明け透けな柊生に、慣れない花は戸惑うばかり。

そんな花の気持ちなんてお構いなしに、柊生はお弁当を開けて、手を合わせてから食べ始める。

花はそれをぼんやりと見ながら、物思いにふける。

これからどうすれば良いのだろうか?

私達は、戸籍上の兄妹であって、世間的にきっと2人が付き合う事は許されない。

思いが通じ合って、嬉しいと思いながらも先を考えて心配になる。

「どうした?心配しなくてもどうにかする。
花は気にしなくていい。」

柊生はそんな花の心を読み取ったのか、顔色を伺ってくる。

ただ、花はこくんと頷いて微笑む。
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