若旦那様の憂鬱
「傷口、痛いか?」
お皿を並べて自分の席に座ると、そう聞いてくる。

「大丈夫だよ。そんなに痛く無い…。
それより早く食べよう。お腹空いてるんでしょ?」

一瞬、兄と目線が合う。
ドキッとして慌てて視線を離し、

「いただきます。」
と手を合わせて食べ始める。

「…いただきます。」

何が言いたそうな柊生だが、とりあえずお腹は減っていたと見られ、無言でしばらく食べ進める。

「柊君のせいじゃ無いからね?
私がドジだから、気にしなくていいからね。」

「気にするだろ…、あれだけ血が出たんだ。
貧血になるかもしれない…。

…それに、揶揄って花を怒らせた俺のせいだ。」

いつもは自信に満ち溢れた柊生が、今はなんだか叱られた子犬みたいに見えてくる。

「花のドジって怒ってくれればいいのに…
柊君がそんな顔してる方が辛いよ。
ごめんね……心配させちゃったね。」
花は柊生に心配かけた事を反省する。

「兄だから心配ぐらいする…。

さっさと食べて今日は早く寝た方がいい。」

また柊生は無言で食べ始める。
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