若旦那様の憂鬱
「私が間違ってた…同情なんてしちゃダメだよね。
もしかしたら、なんて思っちゃダメだった。
私が好きなのは、ずっと前から柊君だけだから。」
笑ってそう言うと、柊君がチラッと私を見て怒った顔で言う。
「運転中にそう言う可愛い事言うな。
抱きしめられないだろ。」
ふふふっと笑う。
今日、柊君に会えてよかった。
1人だったら思い悩むとこだった。
今までだって悩んでる時、柊君が決まって話を聞いてくれた。
普段は素っ気ないくせに、意地悪言って怒らすくせに…。
大事な時は必ず『どうした?』って聞いてくれた。
思いかえせば、進路で悩んだ時だって、友達と喧嘩した時だって、ちゃんと話を聞いてくれるのが柊君だった。
「柊君、今までありがとう。」
嬉しくなってそう伝えると、
「はっ⁉︎それを言うなら、これからもよろしくだろ。
何で今までなんだよ。まるで別れ話みたいになるだろ?」
凄く嫌そうな顔をするから、堪らず、ふふふっと笑ってしまう。
いつもの営業スマイルはどこ言ったの⁉︎
「笑い事じゃ無い。花の一言で、俺がどんだけ一喜一憂するか分かってないだろ。俺の心を掻き乱すな。」
「ふふふっ。これからもよろしくね。」
「それで、宜しい。」
そう言って、安堵の顔をする柊君が愛おしいと思った。
それにしても、『それで宜しい』って何目線?
「たまに面白いよね。柊君て。ふふふっ。」
なんだか笑いが止まらなくなって、しばらく笑ってしまう。
「花の笑いのツボは、俺にはよく分からない…。」
と、柊君は首を傾げて不思議そうに苦笑いする。