若旦那様の憂鬱

突然のプレゼント

20分ほど車で揺られて着いた所は、初めて来た場所で、メルヘンチックな外見が可愛らしいお店だった。

「わぁ。可愛いお店だね。」
車を降りて、花は思わずテンションが上がる。

「花が好きそうだと思って、いつか連れて来たかったんだ。良かった喜んでくれて。」
柊生が嬉しそうに笑う。

不意に手を繋がれて花はびっくりする。

「だ、ダメだよ。柊君、誰が見てるか分からないから。」
そう言って花は離れようとする。

どうしても、イケナイ事をしている気持ちになってしまいあたふたする。

「後ろめたい気持ちになるのは、俺達が書類上の兄妹だからか?」
仕方なく手を離すが、納得はしていないようで柊生は聞いてくる。

「私達が兄妹だって、知ってる人はどう思うか分からないよ…。」

「誰かに何を思われようと、俺は気にしない。
気にならないほど花しか見えないんだ。」
柊生はそう言って、花の一歩前を歩く。

店内まではイタリアの庭園のような庭が続く。
足元にはふわふわの雪が降り積もり、辺りを真っ白に変えて、まるでおとぎ話の世界に入り込んだような、不思議な場所だった。

花は思い切って柊生の小指をそっと握る。

びっくりして振り返る柊生が、嬉しそうに笑う。

「柊君にはファンがいっぱいいるんだよ。
私なんて一緒に歩いてたら何言われるか分からないんだから…。」

「花に何か言う奴がいたら俺が許さない。」

ぎゅっと手を握られる。

「心配するな。全ての火の粉から俺が守る。」
目と目が合う。
柊生の揺るがない熱い視線を感じて、こくんと花は頷く。

柊生の言葉で不思議と気持ちが落ち着いた。
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