若旦那様の憂鬱
「えっ⁉︎何?」

まったく検討もつかない花は首を傾げる。


「開けてみて。」

柊生に促され、恐る恐る綺麗にラッピングされた小さな箱のリボンを解き、慎重にラップを解いてから中から出て来た箱をそっと開ける。

「……えっ⁉︎」

中にはピンク色に輝く宝石が付いた指輪が入っていた。

花はしばらくそれを見つめ固まる。

それを柊生はじれったく思ったのか、おもむろに指輪を取り出し花の右手の薬指にはめる。

「良かった、ぴったりだ。
本当は左手の薬指につけて欲しいとこだけど、花の当惑が目に見えるから、ここで今は我慢する。」

花はその自分の指にはめられた指輪を、目元に近付いてじっくり見る。

「…綺麗…。」
花は感嘆のため息と共にそう呟く。

ピンク色に輝く宝石が花のような形に散りばめられた。その指輪はキラキラと光り輝き、ずっと見ていられるくらい綺麗だった。

「誕生日でも何でもないよ?」
そう不思議そうに柊生を見つめる。

「とりあえず、男避けにと思って買ったんだ。
出来れば毎日身に付けて欲しい。花は俺のだって、周りに知らしめたい。」

そう言って、花の手を取り指輪にキスを落とす。

「とても似合ってる。
これピンクダイアモンドらしいよ。」

「えっ⁉︎ダイヤモンド⁉︎」
花はびっくりして目を見開き柊生を見る。

「思った以上のリアクションだな。」
そう笑いながら柊生が言う。

「い、いくら⁉︎高いんじゃ無いの⁉︎」

花は恐れ慄きそう言ってくるから、

「気にしなくていい。花らしいけど…。婚約指輪にしようかと思ったんだけど、花の気持ちがまだ追いついて無いから、小さいので我慢したんだ。」

「…あ、ありがとう。大事にするね。」

これは現実なのか、夢なのか、と思うほど花は動揺する。

「俺の愛は重いから覚悟した方がいいって言ったろ?」
ニコニコと柊生は笑いながら、そう言って花の頬をサラッと撫ぜるから、否応なくポッと顔が赤くなる。

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