若旦那様の憂鬱

「さぁ、そろそろ何か頼もう。腹減っただろ？」
柊生は気持ちを切り替えメニューを見始める。

ボーっと夢見心地の花をそのままに、

「どっちがいい？」

と、メニューの選択を花に簡単にさせて、どんどん注文してくれた。

運ばれてきたパスタとピザをシェアしながら、2人仲良くいただきますをして食べ始める。

2人だけで外食をした事は無かったけど、今まで実家で夕飯を2人で食べる事はあったからか、あまり違和感なく花の緊張も解けて食事が進んだ。

花はその間も、何度となく指輪を見ては微笑みを繰り返す。

そんな花が可愛いくて、愛おしくて、柊生はしばらく幸せを堪能していた。

不意に花が問う。

「正直に教えて、柊君が家を出たのは私達のせいでしょ？」

「突然どうした？」

柊生は気にも留めないと言う素振りで、パスタを食べながら言う。

「ずっと聞けなかったの。4年前、一人暮らしを始めたでしょ？
柊君の家なのに、私とお母さんが入って来たからなんだと思って、お母さんも申し訳ないって言ってたから。」

「女将さんからも出て行く時に聞かれたな。
強いて言えば自分の為だから、花達が気にしなくてもいい事だ。」

「お母さんは、彼女さんと同棲でも始めるんじゃないかって思ってたよ。
でも、彼女と別れたんだったら、本当なら私が出てがなくちゃ行けなかったんじゃないかって…今更だけど、気付いたの。」