若旦那様の憂鬱
「花、空見て。」

そう言って柊生が空を仰ぎ見る。

花もつられて空を見上げる。

「うわぁ。綺麗…。」

空には満天の星が輝いていた。

「凄い…。プラネタリウムみたい。」
花がそう言う。

ハハッと柊生が笑う。

「こっちが本物なんだよ。うちの周りは光が多すぎて見えないけど、ここまで来れば良く見えるんだな。」
しばらく足を止め空を見上げる。

「柊君も初めて来たの?」

「当たり前だろ。観光スポットにもなってるんだ。
お客様には良く教えてたけど、自分で来たのは初めてだ。」

花は嬉しくなる。柊君の事だから、歴代の彼女と既に来てるのかと思っていた。

そんな花の心を分かったのか、柊生が言う。

「俺は付き合っても面白く無い男なんだって。何処にも連れてって来れないし、無関心で気を配ってもくれない。
何の為に一緒に居るのか分からなくなるって。」
そう言って、花に笑いかける。

「歴代の彼女に言われたの⁉︎」

花がびっくりして柊生を見る。

「歴代のって……そんなにいないだろ。…花には振られない様にしないとな。」
柊生が苦笑いする。

花は信じられない、と思う。

兄妹の時だって、柊君は過保護でいろいろ花の世話を焼いてくれていた。

その柊生が無関心で気を配ってもくれない⁉︎

「何、その顔?」
花のびっくりする顔を見て柊生は苦笑いする。

「柊君は過保護の塊だよ。気を配り過ぎて、疲れちゃうんじゃ無いかと思うくらいなのに。」

「それは、花にだけだ。
昔も今もずっと。花だけが大事で、大切で、放っておけない。」

そう言って、柊生はまた花の手を握りポケットに入れて歩き出す。
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