若旦那様の憂鬱
母がパタパタと洗面所に行く姿を花は目で追っていると、突然後ろからギュッと抱き締められて、ビクッとして、心臓かドキンと跳ねる。
「えっ⁉︎」
「おはよう、花。」
と、柊生が満面の笑顔で花の頬にキスをする。
花は、目を丸くして柊生を見上げる。
「お、おはよう……。」
花は、そう言うのが精一杯で、朝から心臓に悪いと思う。
柊生はパッと花から手を離し離れていく。
「ご飯と味噌汁、俺がよそうよ。」
「あ、ありがとう…。」
「大丈夫か?ちゃんと寝れた?いつにも増してボーっとしてるけど。」
笑いながら柊生が言う。
「…だって、朝から、柊君が居るなんて、思わないから…。
びっくりして…思考回路が追いつかないよ…。」
ハハッと柊生は笑い花の頭を優しく撫ぜて、ご飯をよそってくれる。
花は母と義父のお弁当を詰め終わり、お弁当袋に入れる。
「ありがとう、花。じゃあ、行ってくるからね。
柊生君、花をよろしくね。」
ペコリと柊生は頭を下げる。