若旦那様の憂鬱
朝ごはんを食べ終え食器を洗おうとすると、
柊生に拒まれる。
「俺が洗っておくから、花は身支度整えておいで。」

「うん、ありがとう。ちょっと支度してくるね。」

思いがけず朝から柊君に会えて嬉しい。
しかも、デートに誘ってくれて一日中一緒にいられるなんて、夢みたい。

何着て行こうかと花は迷う。

今日の柊君は紺のデニムに、白のタートルネックのニット、その上にチャコールのチェスターコートを羽織っていた。

何を着てもモデルみたいにカッコよく着こなしてしまう。

そんな柊君の隣にいても違和感が無い感じにしたい。
せめて服装だけでも…。
花は、自分自身の容姿にはあまり自信がない。
母譲りの丸くて大きな目も、温度差ですぐに赤くなってしまう頬も子供の頃から変わりばいのない童顔で…。

柊君みたいな大人っぽい雰囲気の人の隣には、釣り合わないのでは無いかと心配になってしまう。

迷ったあげく、ふわっとした生地のアイボリーのニットにマーメイドラインのグレーのロングスカートを合わせる。

少しは大人っぽく見られるといいなと期待を込めて。
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