若旦那様の憂鬱
「私、柊君とだったら何処へでも行けそう。」
そう言いながら満面の笑みを浮かべる。

「また……どこまで頭の中で飛躍した?
まぁいい。置いていかれるより、一緒にいられるならそれでいい。」

「柊君、ラーメンとかうどんとかも食べれるんだよ。」
花は知ったかぶりして、回転寿司の事を教えながら、楽しそうに食べ始める。

2人、回転寿司を堪能して店を後にする。


車の中、
「また、来ような。」

柊生も初めての回転寿司が楽しかったらしく、満足気味にそう言う。

「回転寿司は特別な日にしか来れないんだよ。私とお母さん2人の生活の時は、誕生日にしか行けなかったんだから。」
花はそう話す。

柊生には、今まで花がこの街に来る前の話をした事が無かった。
思い出したくない思い出だったし、辛い事の方が多かったから…。

でも、ちょっとずつ話さなきゃ、とは思う。

なぜ暗闇が怖いのか…とか、出来れば隠したい過去だけど…話さなきゃいけない事は……ある。

「うちに来てから家族で外食もした事なかったからな…。もっと、普通の家族みたいに過ごすべきだったな…。」
柊生がそう呟く。

「これからは俺が花の行きたかった場所や、やりたかった事、全部叶えてやる。」

そう言って、柊生は花の頬を撫ぜる。

「楽しみにしてるね。」
花もそう言って微笑む。

柊生はそっと花の頬にキスをする。
花はビクッとしてしまうが、これくらい慣れていかなきゃと思う。

「次はどこに行こうか?」
柊生が聞く。

「次のお休みの事?」

「それもだけど、夕方までまだ3時間ある。」
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