若旦那様の憂鬱

花の告白

柊生の運転する車で勝手知ったる地元に戻る。

ポツリポツリと話すだけで、それでも沈黙が怖くないのは、出会ってからの月日のせいなのか。

逆にその時間も心地が良いと感じる。

「花、眠かったら寝ててもいいぞ。」

柊生がそう言ってこちらを見てくるけど、

柊君との2人の時間はとても貴重で、寝るなんてもったい無くて出来るわけないと、花は心で思う。

「全然眠くないよ?
ちょっと考え事してただけ。」

運転しながらも、信号が赤になるたびに触れてくる大きな手とか、運転しながらチラリと見てくる優しい眼差しとか、

いちいちドキドキさせられて、眠くなるタイミングなんて無いぐらいだった。

「もう直ぐだから。」

見知った街並みに入って柊生が花に言う。

「結構、駅に近い所に住んでるんだね。」
 
「ああ、駅に近くて、旅館にも近い方が何かと便利だから。」

しばらく行くと、一棟の背の高いビルの地下に車を進める。
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