若旦那様の憂鬱
事務室に着いて、そう言えば、昨夜は親父が当直だった事を思い出す。
今なら親父に花の事を話せるだろうか、と思いフロントに向かう。
フロントには親父と夜出のスタッフが1人居た。
スタッフに変わりますと伝え、上がって貰う。
「おお、おはよう柊生。僕も朝ご飯食べたいから、早めに上がってもいいかなぁ。」
と、親父が言って来る。
「その前に、一つだけ話があるんですけどいいですか?」
この旅館の仕事に就いてから、自分の父親と言えども上司になる訳で、何となく敬語で話すようになって、今はそれが定着している。
「何、どんな話し?」
親父が軽く聞き返してくる。
「私事なんですが、花と付き合う事になりまして、
ゆくゆくは結婚したいと思っています。
お許し願いますか?」
我ながら、淡々とした口調に呆れてしまうが、これでも少しは緊張している。
返事が来なくて怪訝に思いながら親父を見る。
目が合って、はっ⁉︎と言う顔をされる。
「ですから、花と…。」
もう一度告げようとしたところを遮られる。
「いやいやいや、ちょっと待ってくれ?
柊生には彼女が居たんじゃ無いのか⁉︎」
「何故そうなっているのか分かりませんが、大学を出て以来彼女はいません。ついでに言うと、女将には承諾済みです。」
「結婚を前提に付き合いたいって事?
いやいや…しかし…、花は妹だぞ?
いや、でも…血は繋がってないんだから、別にいいのか…?」
親父は1人自問自答する。
「問題は戸籍上の事だけで、他は大丈夫かと思いますが。」
「えっ…と、花ちゃんは勿論承諾しているんだよね?」
「もちろんです。」
「あれ、なら良いのかな?
いや、花ちゃん週末お見合いしたよね?
あのお相手に翔子さんから電話して、改めてお断りをして謝罪したとは言ってたけど…でも、先方の方が大変残念がってね。
後から僕のスマホに直接電話がきて、聞けば、一回旅館内で花に会っていて、一目惚れしたんだと告げてきたんだ。
花ちゃんは、好きな人がいるって断ったらしいけど……それって君の事⁉︎」
親父はそう言って腕を組み考え出す。
花はそんな風に言って断ったんだと、思わず笑みが漏れそうになる。
が、ここはひとまず気持ちを落ち着けて、
「僕の、事でしょうね。
お見合いの日は、僕が花を迎えに行きましたから。その前に僕等は気持ちを確かめ合っていますが。
とりあえず、その話は丁重に断って頂きたい。何なら僕が今からでも電話しますが。」
「僕…さっき頑張ってってエール送っちゃったよ。
いやダメだよ?
柊生から電話したら角が立っちゃうだろ。」
そう言って、親父はスマホをポケットから出す。
「柊生、花ちゃんは僕にとっても本当の娘みたいに大切なんだ。泣かせちゃダメだよ。
後…もう一つ大事な話がある。
ちょっと後で、翔子さんと一緒に聞いて欲しい。」
「分かりました…。
承諾して頂けたって事ですよね?花は、呼ばなくていいのですか?」
「ああ…花ちゃんには聞かせたく無い話なんだ。とりあえず、昼休みに家に来て欲しい。」
「分かりました。」
思いのほかスムーズに話は進んで良かったと思う。しかし何故親父は俺と女将さんを呼ぶのか?
疑問に思いながらも、仕事に入る。
今なら親父に花の事を話せるだろうか、と思いフロントに向かう。
フロントには親父と夜出のスタッフが1人居た。
スタッフに変わりますと伝え、上がって貰う。
「おお、おはよう柊生。僕も朝ご飯食べたいから、早めに上がってもいいかなぁ。」
と、親父が言って来る。
「その前に、一つだけ話があるんですけどいいですか?」
この旅館の仕事に就いてから、自分の父親と言えども上司になる訳で、何となく敬語で話すようになって、今はそれが定着している。
「何、どんな話し?」
親父が軽く聞き返してくる。
「私事なんですが、花と付き合う事になりまして、
ゆくゆくは結婚したいと思っています。
お許し願いますか?」
我ながら、淡々とした口調に呆れてしまうが、これでも少しは緊張している。
返事が来なくて怪訝に思いながら親父を見る。
目が合って、はっ⁉︎と言う顔をされる。
「ですから、花と…。」
もう一度告げようとしたところを遮られる。
「いやいやいや、ちょっと待ってくれ?
柊生には彼女が居たんじゃ無いのか⁉︎」
「何故そうなっているのか分かりませんが、大学を出て以来彼女はいません。ついでに言うと、女将には承諾済みです。」
「結婚を前提に付き合いたいって事?
いやいや…しかし…、花は妹だぞ?
いや、でも…血は繋がってないんだから、別にいいのか…?」
親父は1人自問自答する。
「問題は戸籍上の事だけで、他は大丈夫かと思いますが。」
「えっ…と、花ちゃんは勿論承諾しているんだよね?」
「もちろんです。」
「あれ、なら良いのかな?
いや、花ちゃん週末お見合いしたよね?
あのお相手に翔子さんから電話して、改めてお断りをして謝罪したとは言ってたけど…でも、先方の方が大変残念がってね。
後から僕のスマホに直接電話がきて、聞けば、一回旅館内で花に会っていて、一目惚れしたんだと告げてきたんだ。
花ちゃんは、好きな人がいるって断ったらしいけど……それって君の事⁉︎」
親父はそう言って腕を組み考え出す。
花はそんな風に言って断ったんだと、思わず笑みが漏れそうになる。
が、ここはひとまず気持ちを落ち着けて、
「僕の、事でしょうね。
お見合いの日は、僕が花を迎えに行きましたから。その前に僕等は気持ちを確かめ合っていますが。
とりあえず、その話は丁重に断って頂きたい。何なら僕が今からでも電話しますが。」
「僕…さっき頑張ってってエール送っちゃったよ。
いやダメだよ?
柊生から電話したら角が立っちゃうだろ。」
そう言って、親父はスマホをポケットから出す。
「柊生、花ちゃんは僕にとっても本当の娘みたいに大切なんだ。泣かせちゃダメだよ。
後…もう一つ大事な話がある。
ちょっと後で、翔子さんと一緒に聞いて欲しい。」
「分かりました…。
承諾して頂けたって事ですよね?花は、呼ばなくていいのですか?」
「ああ…花ちゃんには聞かせたく無い話なんだ。とりあえず、昼休みに家に来て欲しい。」
「分かりました。」
思いのほかスムーズに話は進んで良かったと思う。しかし何故親父は俺と女将さんを呼ぶのか?
疑問に思いながらも、仕事に入る。