若旦那様の憂鬱
午前中は、特に大きな問題無く仕事は進む。

昼休憩になり自宅に足を運ぶ。

玄関のチャイムを鳴らすか、そのまま入るべきか?と一瞬迷い足を止める。

いつも迷うが、今日に限ってはどの立場で入るべきか躊躇する。息子の顔をして入るべきか?
それとも、娘を奪う彼氏として?

とりあえず、玄関チャイムを鳴らす。

「はい、柊生君いらっしゃい。
貴方の家なんだから、どうぞ勝手に上がって来ていいのよ。」

インターフォン越しに女将からそう言われ、そう言うものかと玄関ドアを開ける。

「お邪魔します。父に呼ばれ出来たのですが。」
そう言って、女将に挨拶をする。
今日は、たまたま女将と親父で休みが重なっていた。女将は夕方から出る予定になっている。

「お疲れ様。今日は月曜だし、比較的お客様も少なかったでしょ?問題無かった?」

「はい、大丈夫です。
昨日滞在のお客様が、忘れ物をしたそうでその捜索に少しバタバタしましたが、シーツの回収業者に連絡したら見つかりました。」
軽く、業務報告をする。

「で、話しとは何なんですか?」
休み時間も限られている為、柊生は先を急ぐ。

「そうね。私もまだ聞いてないの。
柊生君が来たら話すからって言われて。
とりあえず、リビングに入ってて私お茶を淹れてくるから。
あっ、お昼は、おうどん食べる?」

「はい、ありがとうございます。」
< 178 / 336 >

この作品をシェア

pagetop