若旦那様の憂鬱
夕方、6時定時で仕事を終え。
女将に引き継ぐ。

「柊生君、花に戸籍の事早く話した方がいいだろうって…正俊さんが言ってて、今夜時間ある?
花のバイト終わりの8時に実家に来て欲しいんだけど…。」

女将からこそっとそう伝えられる。

「はい、分かりました。伺います。」
そう一言告げて、家路に着く。

夕飯をコンビニで買おうと思いつき、花のバイト先に寄る。丁度、レジ対応をしている花を見つけ、弁当を適当に選び、会計の列に並ぶ。

立地の良い場所に立つこのコンビニは引っ切り無しに客の入る繁盛店だ。

大学に入って以来、学校終わりに週3日はバイトに行って、家で家事もこなす。

そんな忙しい日々を送っている花を、少しでも労わってあげたいと、今までもたまに仕事帰りに寄っては、
餌付けの用にお菓子を渡していた。

「花、お疲れ様。今日も忙しそうだな。」

会計の番になって花に話しかける。

花はパッと顔を上げて嬉しそうに笑顔を見せてくれる。

「柊君、お疲れ様。今、仕事帰り?」

「ああ、今日も定時だったから。」
そう言って、手に握れるくらいのチョコを会計したと同時に花に渡す。

「これは花に。今日は何時あがり?」

「いつもありがとう。
今日は8時にはあがるよ。
柊君、野菜も食べた方がいいよ。」
花は、親子丼を買った俺の今夜の夕飯を心配して、そう言ってくる。

「また、花のご飯食べに行くからその時食べるよ。後で実家に行くから、終わるくらいに迎えに来る。」

「えっ、何かあるの?」

「親父が話があるって集合かけてる。」

「…そうなんだ。分かった…、何の話だろう?」

まさか…もしかして、柊君?
付き合ってる事もうお義父さんにも言ったの⁉︎
口には出せないが、花は目を丸くして訴えてくる。

俺は、何とも言えず、

「じゃ、頑張って、また後で。」
とだけ言って、苦笑いしてその場を去る。
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