若旦那様の憂鬱

「でも私、サークルとか飲み会とか苦手てなんだよね。詩織ちゃんは誘ってくれたりするんだけど。」

「そういうのは行かなくていい。
詩織ちゃんに誘われても着いて行くなよ。」
柊君が被り気味にそう言うけど…

もっと遊んだ方がいいと言うのに、行っちゃダメって……どっちなんだろう?
首を傾げながら思う。

私的には暇な時間があれば、柊君の為に使いたいなぁと思う。

でもあんまり、押しかけてご飯作るのも迷惑だよね……。

今まで誰とも付き合った事がないから、今いち距離感が分からない……。

兄妹なら簡単に言えた事が今は言えない。

「どうした?何が言いたい事でもあるのか?」
柊君が運転しながら聞いてくる。

この人はどうしていつも気付いちゃうんだろう。

兄の時も今も…

私が悩んでたり考え事をしていると、目敏く気付いて声をかけてくる。

「何でも無いよ…。」

赤信号でじっとこっちを見てくる。

「そ、そういえば、お義父さん何の用なのかなぁ?柊君知ってる?」
無理矢理話を逸らしてみる。

今度は柊君が戸惑いをみせる。
知ってるんだ……でも、先に言う事が出来ないくらい重大な事…かな…。

聞くに聞けない空気が漂う…。

「…俺も今日聞いたばかりなんだ。親父から直接聞いた方がいい……。」
慎重に言葉を選びながら柊君はそう言う。

「分かった…。」
これ以上は聞けない…でも空気から良い報告じゃない事は分かる。

はぁーっと小さくため息を付く。

柊君は励ますように頭をよしよしと撫ぜてくれた。
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