若旦那様の憂鬱
花を車の助手席にそっと座らせ、振袖の袂を挟まないように、花の膝に乗せドアを閉める。

柊生は運転席に乗り込み、思ってた以上に袴で運転はし難いなと思う。

「運転大丈夫?大変そうだけど…。
タクシーにする?」
花は心配してそう言う。

「ああ、でも車の方が自由が効くから。
ちょっと、靴で運転するけど。」
笑いながら柊生は靴に履き替え、車のエンジンをかける。

「花、どうすればいい?
キスしたいんだけど。」
最近の柊生は、何かにつけて花に乞うように聞いてくる。

「駄目だよ。メイクが取れちゃうから。」
困り顔で花は言う。

「残念だな…。」
はぁーと、ワザとらしくため息を吐く。

「お祖母様とのお話が終わったらいいよ…。」
そう言って、花がしょうがないなぁと笑う。

「よし、頑張れそうだ。」
柊生は爽やかに笑って車を出発させる。
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