若旦那様の憂鬱
車で30分程の郊外の静かな住宅街に、祖母の家はある。

「着いたぞ、行こうか。」
花と柊生は手を取り合って、玄関に立つ。

玄関チャイムを鳴らすと、お手伝の森さんが顔を出す。

「いらっしゃいませ。今日はお揃いでようこそおいで下さいました。あら、お二人ともお着物で。」

びっくり顔のお手伝いさんに花が選びに選んだ手土産を渡す。

「何が良いか迷ったのですが、お祖母様がご贔屓にされている和菓子屋さんの、新作にしました。
お口に合うと良いのですが。」

「まぁまぁ。奥様は新しい物好きですから、絶対お喜びになりますよ。
どうぞ、奥のお座敷でお待ちください。」
2人草履を並べて静々と廊下を歩く。

寒い廊下を抜けると、奥に仏壇が置かれた10畳の和室がある。
そこには、柊生の祖父の位牌が置かれている。

温められた和室に入り、2人は仏壇の前に座り、線香を上げ揃って手を合わせる。

その後、置かれた座布団にそれぞれ座り祖母が来るのを待つ。
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