若旦那様の憂鬱

「2人して揃って来ると聞いた時から、そんな予感はありましたが……。

柊生は花ちゃんを幸せに出来る自信があるの?
世間様は2人を兄妹と認識している筈です。
その批判めいた目線から、花ちゃんを守る事が出来るのかしら。」

これは、俺の心を試されている、と思い言葉を選びながら柊生は言う。

「私のただ一つの願いは、花の澄んだ綺麗な心を守りたいと思っています。
その為に必要であるならば、若旦那という地位を捨ててでも、必要ならばこの地を離れてでも、花と共に在りたいと思っております。」

えっ、花は驚いて目を見開く。

柊生は決して上辺だけの言葉を言わない人だと知っている。
今、この場を乗り切る為だけに、こんな事を言い出す人では無いから…。

もしかして、私を受け入れてくれたあの時からずっとそう思っていたの?

そう思うと、手先が冷たくなって行くのを感じる。

「そこまでの覚悟があるのね。
一橋を捨ててまで花ちゃんを娶りたいのね。」

「はい。」
柊生は真っ直ぐ祖母を見据えて返事をする。

「でも、まだ花ちゃんは大学生よ。
そんなに直ぐに結婚しなくても、卒業を待ってしても良いんじゃない?」
いくらか優しくなった声色で、祖母がそう聞いてくる。

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