若旦那様の憂鬱

「せっかく早く起きて暇だし2人でどっか行くか?」

えっ⁉︎と、花はまたまたびっくりする。

子供の頃はよく遊んでいたけど、中学に入ると康生はサッカー部で忙しく、だんだん2人で遊ぶ事も気恥ずかしくなって、2人だけで何処に出かける事も無くなってしまった。

行ったとしても近くのコンビニくらいだ。

「どうしちゃったの?別にいいよ、何処にも行かなくて…。彼女さんに悪いし。」

康生にも最近付き合い出した彼女がいる。

「たまには妹孝行もしないといけないだろ?
そうだな…、ベタだけど、映画とかどうだ?最近話題のヤツ、俺まだ観てないし。」

「本気なの⁉︎」

「男に二言は無い。」

「…何、その武士みたいな感じ。」
つい笑ってしまう。

「何なら、兄貴も誘うか?
兄貴とどっかに行った事なんてないだろ?
今日本当は休みだったみたいだし、2時間くらいなら抜けられるだろ。」

「それはダメだよ!柊君はお仕事なんだから…。」
花は焦って康生を止める。

柊生こそ長く付き合ってる彼女がいる。

妹ととは言え、やっぱり血が繋がっていないし何かと気を使う。

柊君とお出かけなんて今までした事が無い。
せいぜい、学生時代に塾の送り迎えしてもらった程度だ。

今、柊君と近い距離でいたら私の心臓も持ちそうに無い……と花は思う。
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