若旦那様の憂鬱
祖母が先に書き込み、次に康生の番になる。

「頼むからプレッシャーを与えないでくれ。」
みんなが見守る中、書くのは無理だと康生は根を上げる。

「分かった。俺達は着替えて来るからその間に書けよ。失敗は許さない。」
そう柊生は康生にプレッシャーをかけ、花と共に席を立つ。

「花ちゃんは私が脱ぐのを手伝ってあげるわ。」
祖母もそう言って居間を出て行った。

10分ほど経って、柊生が居間に戻った時にはぐったりした康生がソファに持たれかかっていた。

「ちゃんと書けたのか?」
柊生が聞く。

「ああ、書けたよ…。大学入試より緊張した…。」
と康生はぐったりする。

「それより……何でこの服なんだよ。」
柊生がそう言って康生に抗議する。

「お前じゃ無いんだから、もっとまともな服は無いのか?」
康生が持って来た服は、ダメージデニムに大きめの白のパーカーで、
大学生ならアリだけどいつもの柊生らしからぬ装いだった。

「さすが兄貴、何でも着こなすなぁ。」
感心して康生がそう褒める。

「馬鹿にしてるのか?
他にまともな服は無いのかよ…。」
柊生はそうため息を付く。

「何だよ。翔子さんが何でもいいから貸してやってって言ったから、これでも気を遣って俺の中じゃ、1番のヤツ持って来てやったんだからな。」

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