若旦那様の憂鬱
そんな様子を玄関から見ていた祖母と森さんは、微笑みながら話す。

「柊生は、亭主関白タイプだと思っていたのだけど、意外と尻に引かれるタイプなのかしら。」

「兄貴は、普段は冷静沈着で落ち着いた大人だけど、花の事になると異常なほど過保護で心配症だからね。
それに結局、花には甘いんなんだよなぁ。
きっと、花の言いなりで従順な犬に成り下がるよ、あれは。」

「いつから2人は付き合ってたの?」

「さぁ、でも、兄貴はずっと前から花だけが特別だったよ。」

康生が祖母の横を何食わぬ顔で通過しようとする。

「貴方にはまだお話しがあります。」
祖母はそう言って、
康生の首根っこを捕まえ家の中に引っ張っていく。

その後ろを森さんが笑いながらついて行く。

柊生には厳しく躾け過ぎたと祖母は思っていた。
いつだって本心を隠して取り繕う大人になってしまったと…心配もしていた。

素に戻る場所も無いのかと気にもなっていたけれど。

ああ、良かった。
あの子の前だけは自分を取り戻せるのね。
と、安堵した。
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