若旦那様の憂鬱

カートの所に戻って柊生は心配する。

「花は、ボランティアなんかしなくていい。週末削られたら俺とデート出来なくなるだろ。」
拗ねた様にそう言う。

「だって、私も何か商店街の役に立ちたいなぁって思ったんだもん。」

そうだった…と、柊生は思う。

花の場合、打算的な考えは一切なく、純粋な心で手伝いたいと思ってしまう様な子なのだ。

そこを分かっていながら……
嬉しさのあまり、花を見せびらかしてしまった自分の浅はかさを少し後悔する。

「柊君だって、忙しいのにボランティアでお手伝いするんでしょ?
私だって一緒に手伝うよ。そしたら週末も一緒に居られるよ。」

嬉しそうにしている花を見ると、
打算的な考えしか無かった柊生は何も言えなくなる。

「分かった、俺が出る時限定で参加すれば良い。」
渋々そう言う。

「ねぇ。ミスコンテストって、この街に住んでる人なら誰でもいいの?」

「この街に住んでる18歳以上の独身女子で、
出来れば商店街で働いてる人がいいみたいだけど。」

「それだったら、詩織ちゃんの方が私なんかより絶対良いよ。バイト先も商店街のお土産屋さんだし。」

なるほどなぁと柊生も思う。

「声かけて見てよ。
後、大学にコンテスト募集のポスターとか貼れたらいいかもな。」

適度に花に参加させておけば満足してくれるだろうと、打算しかないが……
柊生は花にそうお願いする。

「分かった。大学の事務局に聞いてみるね。」
花は、早速商店街の為に働ける事を嬉しく思う。

「花が出ればきっと、グランプリ間違い無しだけど、人目に晒したく無いって言うのは本音だからな。」 
柊生はこれ以上ライバルを増やしたくは無いと思う。

「残念ながら、もう今日から独身では無い私は、参加資格が無いよ。」
花は笑いいながらそう言う。

「そうか。花は俺の奥さんだからもうミセスなのか。」
柊生はホッとする。

「花は偉いな。
俺なんかボランティアに打算しか無い。」

「柊君のどこが打算なの?」

「旅館の為になる事しかしないから。」
そう苦笑いする。

「それだったら私だって打算だらけだよ?
少しでも柊君の側に居たいから。」
ふふふっと恥ずかしそうに花は笑う。

柊生はそんな可愛い打算ならいくらでもしてくれと、思いながら手をぎゅっと繋ぎ買い物に戻る。
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