若旦那様の憂鬱
荷物を乗せて家に帰る道中、
花は押し寄せて来る眠気と戦っていた。

ああ、そういえば
今日は朝から着物を着て祖母の家へ行ったり、市役所に行ったり買い物までして疲れさせたな……と柊生は思う。

「花、眠かったら寝ていい。そんな頑張って起きてなくても。」
コクコクと揺れる頭に触れながら柊生が言う。

「……柊君だって疲れてるのに……。」

「俺は大丈夫だから。」

しばらくすると、抗う事を辞めた花はやっと眠り始める。

赤信号で、
柊生は花に自分のコートを掛けながら、
「お疲れ様。」
と呟き、そっと花の額にキスをする。
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