若旦那様の憂鬱
「今日は疲れただろ?
そういえば朝から緊張の連続だったし、花を振り回してしまったと思って、夕飯は何か出前でも頼もう。」

「ううん。大丈夫だよ、お買い物楽しかったし、きっと勢いで書類だって提出しないと、怖気付いちゃってたかもだから。」

逃げるのは諦めて、大人しく柊君の背中に腕を回し抱きついてみる。

柊生は、ため息を吐きながら何も分かって無いな…と思う。

自分のベッドで眠る花を見て、俺がどれだけ自制を求められたのか…。

「そんな無防備でいいのか?俺に襲われる心配くらいはしろよ…。」

「えっ⁉︎」
慌てて両手を離す。

「何にも分かって無いな…。俺が今日どんだけ花にこうしたかったか。」
柊生が急速に唇を塞ぐ。

びっくりしながらも花は一緒懸命にキスに応える。決して嫌では無い…ただこう言った事のスキルが無いだけで、どうするべきが正解か分からないのだ。

軽く啄むような口付けから、段々と息をする間も与えない様な深い口付けになる。

「……っん……。」

空気を求めて、薄く開いた唇から口内に侵入してきた舌に舌を絡め取られ、思わず声が漏れてしまう。

止める事も出来ずされるがままになってしまう。息が乱され頭がボーっとしてきたタイミングで、やっとリップ音と共に唇が離される。

薄めを開けて柊君を見ると、妖艶な雄の表情をされてドキンとする。

「俺の事、もっと男だって意識した方がいい。」
そう咎めながらも優しく花を抱きしめる。
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