若旦那様の憂鬱
「何で…柊君がいるの?」
花は呆然として立ち止まる。
康生と2人、おずおずと柊生が待つ出口に向かう。
「ごめん。兄貴!もしかして映画一緒に観たかった?」
先手必勝と言う感じで康生は柊生に話しかける。
「俺は、花を見張れと言っただけで、
連れ回せとは言ってない。」
明らかに怒った声で柊生が言う。
柊生は地元じゃそこそこ顔を知られているし、こんな所で長身のイケメンが喧嘩してたら目立ってしまう。
慌てて花は2人の手を取り、
引っ張ってとりあえず目立たない場所まで連れて行く。
「花、指を動かすな。」
柊生の袖を引っ張っている側が怪我した手だったから、柊生は心配で気が気じゃ無い。
花の手を反対側の手でそっと握り離させる。
「あんな所で喧嘩してたら、目立っちゃうよ。」
右手で掴んでいた康生の腕を離しながら花が言う。
「柊君はお仕事抜けて来たの?」
「いや、昼休みだ。
外周りだって言えば少しぐらい遅れてもなんて事ない。」
真面目な柊生らしからぬ発言をするから、
花と康生は驚き柊生を見る。
「花は俺が連れて帰る。」
柊生はそう言って花の右手を掴み連れて行こうとする。