若旦那様の憂鬱
「せっかくだから、3人でランチして帰ろぜ。」
康生は空気を変えるように明るく言って、
2人の背中を強引に押して歩き始める。

「おい。俺は暇な学生じゃ無いんだ。
花を送ったら仕事に戻る。」

「さっき、外周りだって言えばいいって言ったのは兄貴だろ。
花、何食べたい?
ここら辺ならなんでもあるぞ。」

「柊君、仕事なら先に帰っていいよ。」
花は気を遣う。
 
「花を連れて帰る為に来たのに…
1人じゃ帰れる訳ないだろ。」
と、柊生はお怒り気味だ。

普段、外で会う時は表の仮面を被った柊君なのに今日はどうしたんだろ?
 
と、花は不思議に思う。

「兄貴の機嫌が悪いのは、
俺と花がデートしてるからだろ気にするな。」
康生がそう花の耳元で小さく話す。

柊生は、そんな康生をジロっと睨んで今にも殴りかかりそうな雰囲気を醸し出す。

花は慌てて2人の間に入って、
不穏な空気を追い払うかのように明るく言う。

「兄妹3人でお出かけした事無かったから、
なんか楽しいね。」

花は何にが良いかなぁとお店を探り始める。

「きゃっ。」
お店にばかりに気を取られ、
足元の段差に気付かず転びそうになる。

すかさず両サイドから康生と柊生が手を出し受け止める。

「おい、気を付けてくれよ。
3人で外出して花が怪我したなんて知ったら女将に怒られる。」
康生が笑いながらそう言う。
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