若旦那様の憂鬱
車で実家まで花を送る。

「ありがとうね。じゃあ、お仕事頑張って。」
花は車を降りて外に出る。
お見送りしようと振り返ると、柊生も車から降りて来て抱きしめられ、急速に唇を塞がれる。

舌が絡められ口内を掻き回される。

「……っん……」

苦しくて離れたいのに、このままずっとこうしていたいような…お腹の奥がキュンとして、頭の中が真っ白になって……

離れていく柊生が、唇をペロッと舐める仕草や妖艶な瞳にドキドキして、花はこのまま食べられてしまうのかと思ってしまった。

「…しゅ、柊君…?」
息を整えながら柊生を見つめる。

「ごめん…嫉妬してたんだ…本当は花は俺のだって、
気安く近付くなって言いたかった…。」
そう言ってまた、ぎゅっと抱きしめられた。

「柊君…仕事…。」

「……ああ……。」

「アイツが…俺は完璧だって言ってたけど…頭の中じゃ嫉妬でいっぱいだった…完璧なんて程遠い……ただの男だって思い知る。」

「…私、そんな柊君も嫌いじゃないよ。」

花はぎゅっと抱きしめ返して精一杯背伸びして、柊生の髪を優しく撫ぜてみる。

「…犬…みたいか?」

「…今の柊君は…子犬みたいで可愛い。」
よしよしと頭を撫ぜて花は微笑む。
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