若旦那様の憂鬱
「本当に疲れた…。」

控え室に入るなり柊生が花を抱きしめる。

「お疲れ様…大丈夫?」

柊生からかなりの疲労を感じて、花は柊生の大きな背中を撫ぜながら心配する。

「候補者みんな我が強くて、時間押してるのに止めてくれないし……時間オーバーしそうでハラハラした。精神的に疲れたよ……。」

「確かに、大変だったよね…。でも上手に回してたよ。」
花は労い褒め称える。

「花との昼休みを削る訳にはいけないって一心で頑張ったから。」
そう笑いながら花を解放してくれる。

一緒に用意されたお弁当を食べ、少しだけ寛ぐ。

「お肩でも揉みましょうか?」

花がそう言うから、柊生はお願いしますと頭を下げて笑う。

椅子の後ろに回った花がトントン叩いてみる。
「堅いね…肩凝ってるの?えっ⁉︎これ筋肉?」

「これでも週2で鍛えてるから、実はあんまり肩とか凝らない。」
そう言って爽やかに笑う。

なんだぁーっと思って花は苦笑いする。

「花、こっち来て。俺が花を癒してあげる。」
柊生はそう言って、自分の膝をトントン叩く。

まだ仕事中だからと言おうとするが…柊生の笑顔に逆らえない気がして、仕方が無いと近付いて見るけど…

子供じゃ無いのに膝に座るのはさすがに躊躇する。

柊生はそんな花の手を引っ張り、強引に膝に座らせ抱きしめる。

「後、10分このままで。」

花は逃げられそうも無いと、笑って柊生に寄りかかり抱き付いてみる。

「こうしてると癒される。花の匂い、良い匂い。」

「に、匂い?やだ、離して。ずっと走り回ってたから、汗かいてるし…。」
慌てて離れようとするのに、力では敵わない。
「良い匂いなんだから大丈夫だ。」
< 253 / 336 >

この作品をシェア

pagetop