若旦那様の憂鬱
花は持って行くダンボール箱からマフラーを取り出して思う。
懐かしい…。
15歳でこのうちに母と来たその日は、雪の散らつく寒い冬だった。
2人の時はいつも何時でも、あの人が来ても身軽に逃げられる様にと、物をなるべく増やさない質素な生活をしていた。
その為、コートは1着しか持って無かったし、手袋も安いものだった、マフラーなんて1着も持っていなかった。
引越してすぐのある日、部活で帰りが遅くなって暗い夜道を1人急いで帰っていた時、偶然、柊君にコンビニの前で会ったんだよね…。
よっぽど寒そうに見えたのか、自分のしていたマフラーを柊君は貸してくれた。一緒に居た女子に怖い顔で睨まれたから、きっと当時付き合ってた彼女だったはず…。
あの時から今と変わらず、過保護で心配症だったなぁ。と花は思う。