若旦那様の憂鬱
「花、荷物玄関まで下ろしてやるよ。」
康生がそう部屋の外から声をかけてくる。

「ありがとう。でも、今からバイトでしょ?時間大丈夫?」

「すぐだから大丈夫。兄貴からくれぐれも言われてるんだ。花に重い荷物を運ばせるなって。」

「そんな事まで柊君、気にしてくれてるんだ…。」

「兄貴の花への過保護は今に始まった事じゃ無いけど…その代わり本当、昔っから俺の扱い荒いんだよな。」

「いつもありがとね。康君が居てくれたから柊君が引っ越しても、寂しくなかったんだよ。」

「…そう言う事言うな。寂しくなるだろ…。」
康生が呟く。

「でも、マンションからそんなに遠く無いし、たまには夕飯とか作りに来るから、そんなに寂しくないよ。」
花はそう微笑みながら言う。
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