若旦那様の憂鬱
康君と違って、柊君はこういうとこ慣れてて、大人でスマートだなぁと思う。

車の中はある意味密室で、2人きりになって、
ちょっと緊張気味の花はソワソワしてしまう。

「彼女さんに怒られない?」

緊張を紛らわす為ワザとおどけて聞いてみる。
 
「……花が、気にする事じゃない。」
シートベルトをしてエンジンをかけながら柊生が言う。

「…柊君は、いつ結婚するんだろう? 
ってお母さんが言ってたよ。」

自分で言いながら心がチクチク痛み出す。

「結婚はしない…。多分、一生しない。」

「えっ?どうして?
柊君モテるのに勿体無いよ…。」

「…好きな子にモテなきゃ意味ないだろ。」
そんな事を言う柊生が心配になる。

「柊君も…いろいろあるんだねぇ。
…彼女さんと上手くいってないの?」

こんな話、柊生とは初めてしたと花は思う。

なんだか今まで、柊君の恋愛話は辛くてちゃんと聞けそうも無かったし。

今だって本当は聞きたくないけど……。

心がズキズキと痛み出す。
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