若旦那様の憂鬱

「私も柊君に何か買いたい。早く並ぼうよ。」
待ち切れないほどワクワクしてきて、思わず柊君の手を引っ張って玄関へ向かう。

同じようにアーリータイムを待つお客様は思ったよりいっぱいいて、既に人だかりが出来ていた。

あっそういえば……
柊君って御曹司だった…
並んだり、待ったり、人混みとかって大丈夫なのかな?
嫌になったりしないかなぁ。

康君は近所のラーメン屋さんでさえ並びたくないから、いつも私を1人で待たせて近付いたら車から出てくるような、ズルい人だったけど……

そんな事を心配して思わず柊君を見上げる。

「どうした?」

柊君は私の心を読もうしてじっと見てくる。

「柊君って、人混み大丈夫?並んだりとか待ったりとか平気?」
思った事を聞いてみる。

「そういう経験は正直あんまり無いけど、花がいれば大丈夫だろ。飽きる事なんて無いから。」

爽やかな笑顔で笑う。

「柊君って御曹司だもんね。人を待たせても待つ事なんてしないよね。」

「…変な偏見で見ないで欲しいんだけど、俺だって一般人だよ。別に待つし、花がいれば何時間でも待てるから。」

ちょっと怒らせちゃったかな?私がいる限定なのが気になるけど…

「康君はいつもラーメン屋さんに並ぶ時、私だけ並ばせるから、柊君もそうかなって思っただけだよ。」
正直にそう伝える。

「アイツと一緒にしないでくれ。花を1人にするなんて心配過ぎてあり得ない。変な男が寄って来たらどうするんだよ。」

それは問題では無いと思うけど?

優しい旦那様はどこまでも過保護で心配症みたい。
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