若旦那様の憂鬱
「えっ⁉︎いつの間に?」
広いベンチシートに座りながら花はびっくりする。

「金に物言わせてみた。」
柊生らしからぬ発言をするから、
花はまたびっくりして目を見開く。

ハハっと柊生が笑う。

「冗談だよ。
ホテルの支配人が知り合いだったから、
座ってパレードが見れる場所は無いかって聞いてみたんだ。
そしたら予約までしてくれた。言ってみるもんだな。」

「こちら、支配人からです。」

スタッフが戻って来て飲み物とポップコーンまで手渡してくれる。

「ありがとうございます。」
花は思わず頭を下げてお礼を言う。

「ごゆっくりお楽しみ下さい。」
とスタッフはにこやかに去っていった。

こんなに人集りが出来ているのに、
このテラスだけは柊生と花2人だけ。

「えっ…これ大丈夫?バチ当たらない?」
花が心配そうに柊生をみる。

「花はいつも慎ましく生活してるんだから、
これはきっとご褒美だから大丈夫。」
柊生がそう言うからホッとする。

ジュースを飲んで寛いでいると、パレードのファンファーレが聞こえて来た。
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