若旦那様の憂鬱
パレードなんて今までテレビでしか見た事なかった。
花の胸は否応にも高鳴り思わず柊生の手を両手で握りしめる。

パレードが始まりキャラクター達が踊りながら舞台から手を振って来る。

貴賓席のようなこのテラスは特別な席らしく、どのキャラクターも手を振り返してくれる。
「凄いねー。」

花は何度となくそう言ってはキラキラの笑顔で柊生を見る。

柊生もその姿に満足して、
まるで休日のお父さんのように、
花の写真を撮ったり、キャラクター達をビデオに納めたりと忙しく働いていた。

「ありがとう柊君、連れて来てくれて。」
花は感極まったのか涙まで流す。

「嬉し泣きなら仕方ない。今日は大目にみてやる。」
ハンカチで花の頬に流れる涙を拭きながら柊生はそう言う。

パレードを堪能してからお昼も同じテラスで食べる。

「なんだかお姫様になった気分。」
花は本当に夢の中のようなふわふわした気分になる。
目の前にはフランス料理がコースで次々に運ばれて来る。

「朝も昼も贅沢過ぎない?
何だか現実に戻るのが怖くなってくる。」

日頃から贅沢とは程遠い世界にいる花にとっては、どうしてもそう言う心境になってしまう。

「花、ここにいる間は全部忘れて楽しめばいいんだ。誰も咎める人なんていないんだから。」
柊生にそう言われ、花は頷き目の前の料理を堪能した。
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