若旦那様の憂鬱
電話を終え、親父の応接室の対応が気になり耳を傾ける。

「花はどこに居る？
俺の知らない間に、戸籍から花が消えてたんだけど、どう言う事？
花は俺の娘なんだから知る権利あるよね。」

「花ちゃんは私の娘でもあります。
それに、彼女は２０歳になりました。
親の意思が無くても自由に戸籍から出れる年齢です。
ところで、どうしてここが分かったのですか？
それに今更、なぜ彼女に会いに来たのですか？」

親父は冷静に対応している。

「親が自分の娘に会いに来て何が悪い。」

だんだん男はイライラしてきたのか声を荒げる。

「花をここに連れて来い！
花が来ない限りここから動かないからな。」

「失礼ながら、貴方が花ちゃんにした事は許される事では無い。花ちゃんは貴方に会いたく無いはずです。」
そう親父はっきりと言う。

「俺達親子の事に赤の他人のあんたにとやかく言われる筋合いは無い。
翔子は？いつ帰って来るんだ？」

「翔子さんは私の妻だ、
貴方に呼び捨てにされる筋合いは無い。
それに貴方には会わせるつもりは一切ありません。悪しからず。」

「これじゃあ埒があかないなぁ。早く花呼べよ！」
男が今にも爆発しそうだ。

柊生は居ても立っても居られず応接室に入る。
「失礼します。
お客様、本日、一部屋空きがございます。
宜しかったらそちらにご宿泊はいかがでしょう。」

とりあえずはこの男の居場所が分かるようにした方が花の安全に繋がると咄嗟に思いついた。

「へぇ。泊めてくれるだ。
もちろん無料だな⁉︎無賃泊で捕まったら堪らないからな。」

「ええ、もちろんです。夕食も付けさせて頂きますよ。」
親父もピンと来たのかそう言って男の機嫌を取りだす。

男の苛立ちを幾分か抑える事に成功し、
特別室である離れに通す。

もし何か起こったとしても、
滞在中のお客様には、極力迷惑にならないような部屋だからだ。
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