若旦那様の憂鬱
後は弁護士が到着するまで待たせて、話し合いで解決策を探ると親父が言う。
花からは家に帰ったと言うメールが来ていたが、その後気になり、返信したが既読にならない。
通常業務に戻りながらも、胸騒ぎがして再度花に電話をする。
トゥルルル トゥルルル…
着信音を鳴らす。
5回程鳴らしたところで留守番電話に変わる。
心配になり自宅にも電話をしてみたが出ない……
そのタイミングで団体客が到着した為、慌ただしくなり、心配を抱えたまま時間だけが過ぎていく。
「若旦那、女将さんから急ぎのお電話です。」
事務スタッフから声をかけられたのが夕方16時過ぎ、フロント業務を変わってもらい急いで電話に出る。
「お疲れ様です。どうされましたか?」
『ごめんなさい、柊生君。
あの、あのね…。花に…父親が来た事、
私伝えてしまって、先に貴方から言ってあるとばかり思って。
それで、今の状況を伝えるべきだと思って連絡したんだけど……。』
「それで、花は、どうしたんですか?」
慌てる女将が落ち着けようとゆっくりと話しかける。
ただ、俺自身乱れる鼓動を隠していた。
「花と、電話が繋がらないの…あの子には柊生君が戻るまで、家から出ちゃダメよって言っておいたんだけど。ごめんなさい。私、余分な事をしてしまったんだわ…。」