若旦那様の憂鬱
「…実は、僕もさっき気になって再度連絡を入れたのですが…出なくて…。
とりあえず、
花の実父はここに引き止めているので、
心配しないでください。
ただ…花が心配なので一度自宅に行って来ます。必ず連絡しますので。」
俺はドクンドクンと嫌な音を立てる心臓を抑えながら、
「少し出かけて来ます。」
と事務員に告げ席を立つ。
居ても立っても居られない。
花の安否が分かるまでは仕事どころでは無い。
旅館の裏庭を全速力で走り抜け駐車場に停めてある車に乗り込む。
運転しながらも何度となく花のスマホに電話する。
あの男が現れてから、
鳴り続ける頭の中のシグナルは不安を駆り立てる。
ハンドルを握り締める手は汗ばみ感覚さえも無くす。
心の中でただひたすら花に呼びかけ、
気持ちだけが焦る。
自宅に着いて勢いよく部屋に入る。
靴を脱ぐのも煩わしいぐらい慌ただしく脱ぎ捨て、部屋中花を探す。
キッチンに居間、寝室に浴室、クローゼット…どこにも花の姿が無い。
途方に暮れる。
残り一部屋、花の為に用意した部屋は、
気兼ねもあっていままで一度も入った事が無かったが、部屋にいる事を願いながら恐る恐る近付く。
「花?」
問いかけドアの前に立つが返答は無く、
心がギシギシと痛む音がする。
少しの希望と共に、ドアをそっと開ける。
電気をつけて見渡す。
どこもかしこも花らしい可愛らしい部屋だ。
そっと一歩ずつ部屋に踏み入れる。
ふと、いつもはベッドの上に置かれている、猫のぬいぐるみが1匹机の上に置かれていた。
そっと近付き猫のぬいぐるみを持ち上げる。
その下に、花のスマホと指輪が2つ、家の鍵に、食費を買うようにと渡しておいたクレジットカードまで……。
瞬間、頭の中が真っ白になり思考が止まる。
息をする事すら忘れ呆然となる。
なぜ?なせだ⁉︎
さっきまで、電話で話していたのに、
今夜も一緒のベッドで抱きしめて寝るはずだったのに、
花……何故居なくなった?
膝から崩れそうになる自分自身を机に手を付いてなんとか踏ん張る。
ふと、持ち上げた猫のぬいぐるみが白い封筒を持っている事に気付く。
慌てて封を開き手紙を読む。
『柊君へ
迷惑をかけてごめんなさい。
私のせいで旅館に何かあったらと思うと心が痛くて辛いです。
一橋旅館を守る唯一の方法は、私がここから居なくなる事だと思います。
今までたくさんの幸せをありがとう。
たくさんの愛をありがとう。
私にとって柊君との生活は夢のような時間でした。
貴方に会えて良かった。
遠くから貴方の幸せを祈っています。
花より』
とりあえず、
花の実父はここに引き止めているので、
心配しないでください。
ただ…花が心配なので一度自宅に行って来ます。必ず連絡しますので。」
俺はドクンドクンと嫌な音を立てる心臓を抑えながら、
「少し出かけて来ます。」
と事務員に告げ席を立つ。
居ても立っても居られない。
花の安否が分かるまでは仕事どころでは無い。
旅館の裏庭を全速力で走り抜け駐車場に停めてある車に乗り込む。
運転しながらも何度となく花のスマホに電話する。
あの男が現れてから、
鳴り続ける頭の中のシグナルは不安を駆り立てる。
ハンドルを握り締める手は汗ばみ感覚さえも無くす。
心の中でただひたすら花に呼びかけ、
気持ちだけが焦る。
自宅に着いて勢いよく部屋に入る。
靴を脱ぐのも煩わしいぐらい慌ただしく脱ぎ捨て、部屋中花を探す。
キッチンに居間、寝室に浴室、クローゼット…どこにも花の姿が無い。
途方に暮れる。
残り一部屋、花の為に用意した部屋は、
気兼ねもあっていままで一度も入った事が無かったが、部屋にいる事を願いながら恐る恐る近付く。
「花?」
問いかけドアの前に立つが返答は無く、
心がギシギシと痛む音がする。
少しの希望と共に、ドアをそっと開ける。
電気をつけて見渡す。
どこもかしこも花らしい可愛らしい部屋だ。
そっと一歩ずつ部屋に踏み入れる。
ふと、いつもはベッドの上に置かれている、猫のぬいぐるみが1匹机の上に置かれていた。
そっと近付き猫のぬいぐるみを持ち上げる。
その下に、花のスマホと指輪が2つ、家の鍵に、食費を買うようにと渡しておいたクレジットカードまで……。
瞬間、頭の中が真っ白になり思考が止まる。
息をする事すら忘れ呆然となる。
なぜ?なせだ⁉︎
さっきまで、電話で話していたのに、
今夜も一緒のベッドで抱きしめて寝るはずだったのに、
花……何故居なくなった?
膝から崩れそうになる自分自身を机に手を付いてなんとか踏ん張る。
ふと、持ち上げた猫のぬいぐるみが白い封筒を持っている事に気付く。
慌てて封を開き手紙を読む。
『柊君へ
迷惑をかけてごめんなさい。
私のせいで旅館に何かあったらと思うと心が痛くて辛いです。
一橋旅館を守る唯一の方法は、私がここから居なくなる事だと思います。
今までたくさんの幸せをありがとう。
たくさんの愛をありがとう。
私にとって柊君との生活は夢のような時間でした。
貴方に会えて良かった。
遠くから貴方の幸せを祈っています。
花より』