若旦那様の憂鬱
花……なぜ?
なぜ、俺をもっと頼ってくれないんだ。
なぜ、1人で全てを抱え込もうとするんだ。

どこへ行った?
働かない頭で花の行きたい所リストを思い出す。
1番遠い場所は
……沖縄か北海道だ。

沖縄は水族館に行きたいと行っていた。
北海道は動物園だ。
花だったらどっちに行く?

週末には地元の水族館に行く予定だった…。
花も楽しみにしていたはずだ。

水族館か?…いや、俺が居ないのに1人で行くとは思えない。

花だったら…きっと、北海道だ。
近くの動物園にはすでに一緒に行ったし、
花は寒さより暑さが苦手だ。

直感で北海道だと決断する。

飛行機で近くの空港から行くとすると…。
スマホを開き北海道行きの便を探す。
今日の便は残り一便だ。

これしか無いと、なぜか分からないが確信する。
急いで、必要最低限の荷物をまとめ部屋を飛び出す。
間に合うか?
間に合わせてみせる。

花はきっとバスか電車で空港に向かう。
エントランスでタクシーを頼み、一度旅館に電話する。

「親父、花が居なくなった。
自分のせいだと、迷惑をかけて申し訳ないって手紙が…
自分さえ居なくなればあの男はすぐに居なくなると思ったみたいだ。
今から花を追う。悪いけど…。」

『こっちの事は気にしなくていいから。
あの男の事もなんとかするから大丈夫だよ。
花ちゃんを見つけるまで帰って来なくていいから、必ず一緒に帰って来るんだ。
どこへ行ったのか、目処は付いてるのか?』

「ああ、多分北海道だ。前に行きたがっていたから。」
それだけ伝えて迎えに来たタクシーに乗り込む。
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