若旦那様の憂鬱
タクシーで45分程で空港に到着する。

急いで降りて空港券を買うためフロントに走る。一席だけキャンセルが出たらしくなんとか手に入れ搭乗口の待合に走る。

花がそこにいる事を祈りながら…。

ゲート前に行くと搭乗手続きが既に始まっていて、乗客が列を作っている。

飛行機の規模から考えたら、多分半分くらいは既に搭乗が終わっているかもしれない…

不安と、どうしようもない焦燥感に襲われ、
ギシギシと軋む心臓を抑えながら、
並んでいる乗客を先頭から見ていく。

夏休みに入っている為、子連れも多くツアー客もいるようだ。
騒つく人並みを丁寧に見て回ったが、

花はいなかった…。

感が外れたのか…?

ここで間違えたらもう2度と会えないかもしれない。

花と繋がっていた物は全て俺の荷物の中だ。

いや……既に搭乗して飛行機の中なのかもしれない。まだ、可能性はある。

そう思い直して、最後尾に並び機内に乗り込む。

座席は普通席しか空いていなかったから仕方が無いが、いつも乗り慣れているファーストクラスよりも随分と狭い。

しかも窓際だから花を探したいのに身動きが取れそうも無い。

「お兄さん、足長くて狭そうで大変だねぇ。」
隣の中年男性が俺に話しかけてくる。

「すいません、窮屈ですよね。空席があれば移動したんですがあいにく満席らしくて。」
苦笑いして頭を下げる。

俺にとっては席との間が狭過ぎて足を組む事も出来ない。
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