若旦那様の憂鬱
搭乗時間ギリギリで飛行機に飛び込む。
これが今日の最終便だったからなんとか乗れてホッとする。
窓際の最後列あたりが指定席で、先に乗っていたサラリーマン風の男性に頭を下げて席に着く。
「良かったら荷物乗せましょうか?」
親切な男性はそう言って、茶トラの入ったカバンを頭上の棚に入れてくれた。
「あっ……尻尾が出てたね。」
見上げると茶トラの長い尻尾が垂れ下がっている。
「すいません、ありがとうございます。」
ちょっと恥ずかしくなりながら花はお礼を言う。
「ぬいぐるみ?うちの子も肩身離さず持ち歩いてるよ。」
そう言って笑う男性は、
聞けば北海道から単身赴任で来ていて、
今日は久しぶりの帰省らしい。
1人娘が居る自宅へ1カ月振りに帰ると言う。
優しい父の顔でその男性は話す。
もし、私と柊君の間に子供がいたらきっと、柊君もこんな風に優しく笑うんだろうなと思ってしまう。
また、涙が出そうになって慌てて窓の風景に目を向ける。
夕暮れ時、
太陽が沈むか沈まないかの瀬戸際で、
空の色が綺麗な茜色から群青色に変わっていく。
思わず、
「綺麗…。」
と、呟いてしまう。
柊君は今頃どうしているだろうか…
実父と対面してどう思っただろうか…。
そう思うと、胸が締め付けられるくらい痛い。
ごめんなさい。ごめんなさい…と、何度も呪文のように唱える。
これが今日の最終便だったからなんとか乗れてホッとする。
窓際の最後列あたりが指定席で、先に乗っていたサラリーマン風の男性に頭を下げて席に着く。
「良かったら荷物乗せましょうか?」
親切な男性はそう言って、茶トラの入ったカバンを頭上の棚に入れてくれた。
「あっ……尻尾が出てたね。」
見上げると茶トラの長い尻尾が垂れ下がっている。
「すいません、ありがとうございます。」
ちょっと恥ずかしくなりながら花はお礼を言う。
「ぬいぐるみ?うちの子も肩身離さず持ち歩いてるよ。」
そう言って笑う男性は、
聞けば北海道から単身赴任で来ていて、
今日は久しぶりの帰省らしい。
1人娘が居る自宅へ1カ月振りに帰ると言う。
優しい父の顔でその男性は話す。
もし、私と柊君の間に子供がいたらきっと、柊君もこんな風に優しく笑うんだろうなと思ってしまう。
また、涙が出そうになって慌てて窓の風景に目を向ける。
夕暮れ時、
太陽が沈むか沈まないかの瀬戸際で、
空の色が綺麗な茜色から群青色に変わっていく。
思わず、
「綺麗…。」
と、呟いてしまう。
柊君は今頃どうしているだろうか…
実父と対面してどう思っただろうか…。
そう思うと、胸が締め付けられるくらい痛い。
ごめんなさい。ごめんなさい…と、何度も呪文のように唱える。