若旦那様の憂鬱
そうなの?と返事をしようと見上げると、早急に唇を塞がれ、花の心臓はドキンと跳ねる。

「し、柊君…ま、待って……。」
花は狼狽え逃げようと試みるが、どんどん壁に追い込まれ逆に逃げ場が無くなってしまう。

何度目かのキスが降り注ぎ、
花は既に息も絶え絶えで呼吸が乱れてしまう。

「……っん……。」

舌が無理矢理入り込んで口内を自由に這い回る。

いつもは花の様子を伺いながらゆっくりしてくれるのに…

やっぱり、勝手に出て行った事を怒ってるんだと花は思う。

ブラウスのボタンがいつの間にか1つずつ外されていて、びっくりして思わず柊生の手を押さえる。

「しゅ、柊君、お、お風呂入るって…言ってたのに…。」

「そんなの口実だろ?今からエッチな事しますなんて言えないだろ。」
そう言ってすぐに唇を塞がれる。

今の柊生は獰猛な野良犬みたいだと花は思う。
首筋まで舐められてドキドキと心臓が否応にも高鳴る。

「ち、ちょっと、本当に…あ、汗かいたから……き、汚いから……。」
再度柊生の手を握り行為を止めようと試みる。

「花に汚いところなんてある訳ないだろ。今まで嫌われたく無くて、押さえ気味に抱いてたけど、もっと抱き潰して、俺から離れられない身体にするから覚悟して。」

な、なんで卑猥な事を軽々しく言うの…花は言葉を無くして顔を真っ赤にする。

逃げた私が悪いんだけど……

でも、女の子には心の準備と言うものがあるんだから。
抗議の目で精一杯睨み付ける。

「…分かった。一緒に風呂に入ろう。」

そう言って、抱き抱えられて脱衣場に連れていかれる。

なんの抵抗も虚しく全て脱がされて、なんとかフェイスタオルで隠すのみになってしまった。

花はやっとここで観念して、これは柊君から勝手に逃げた私に対しての甘いお仕置きなんだと思う事にする。

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