若旦那様の憂鬱

成人の日

一週間は、大学の授業と課題、アルバイトで追われる毎日であっという間に過ぎた。

朝、6時に目が覚める。

雪はどうだろうか?

ベッドの側にある窓のカーテンを開け外を見る。

昨夜から降った雪は降り積り、辺り一面ふわふわの新雪に覆われていた。

でも天気は快晴、きっとまた溶けてすぐ消えて無くなってしまうかもしれない。

そう思って急いでスマホで写真を撮る。

成人式に相応しい爽やかな朝。

いつものように朝食を作る為、服に着替えて下に行く。

「おはよう。花、体調は万全?」

「おはよう、お母さん。昨日は遅かったんでしょ?
寝ててくれていいのに。私、朝ご飯作るよ。」

昨夜は旅館のトイレの凍結騒ぎで、母の帰りが10時過ぎになった。

「何言ってるの。 
娘のハレの日に寝てなんていられないわよ。
花が包丁で怪我したら大変だから、今日は1日包丁持っちゃダメよ。」

「そんなにいつも切らないよ。もう、みんな心配性なんだから。」
花は呆れた顔で言う。

「7時半には旅館に行ってね。
トミさんが茶室で待ってるから。
後、長襦袢と小物も忘れないようにね。」

「分かってる。
昨日のうちに準備しておいたから大丈夫だよ。
外、雪が積もったみたいだね。」


「そうなのよ。
でも天気が良いから午後に溶けちゃいそうよ。きっと転倒者続出だから花、気をつけて歩くのよ。
草履に滑り止め付いてるかしら。」 
心配性の母はそう言う。

「雪仕様の草履なんてあるの?」

「あるのよ。
正俊さんどっちにしたのかしら?
ちょっと旅館に聞いてみた方が良いかも。」

正俊とは義父の事で、昨夜は当直で旅館に寝泊まりをしていた。

「分かった。私、電話して見るね。」

6時半前だけど仮眠中かなぁ?

ちょっと心配になりながら電話をかける。
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