若旦那様の憂鬱
正月明けの今日。
代々続く老舗旅館を営む我が家にとって、
一年で1番忙しい日なのかもしれない。
5年前に後妻に入った私の母が今は女将を務めている。
柊君は旅館の跡取りとして大学を卒業後、4年前から若旦那としてこの旅館で働いている。
一橋 柊生(ひとつばし しゅうせい)
私より7つ年上の27歳独身、彼女あり…。
表の顔はにこやかで物腰も柔らかく、それに加え端正な顔立ちも相まって、世間では評判の若旦那として注目を集めている。今では、彼目当てに訪れるお客様もいるくらだ。
弟の康君は今年大学4年生の23歳。
一橋 康生(ひとつばし こうせい)
サッカーをこよなく愛し、いつも元気で暇さえ有ればサッカーの練習をしている。
彼も兄に劣らず爽やかなイケメンで、モテモテの人生を送っている。
就職先はもちろんこの旅館で早々決まり、今は残り少ない学生生活を謳歌している。
そして私、
一橋 花(ひとつばし はな)20歳
現在、地元の教育学部に通う大学2年生。
家の近くのコンビニでアルバイトをしながら、女将業の忙しい母に変わって家の家事を一手に担い、ごくごく普通の毎日を送っている。
母に似た大きな目と、色白な肌だけが取り柄。
身長も155センチと小さめで、兄2人のように目立つ事もなく平凡そのもの。