若旦那様の憂鬱
「花は何飲む?お酒大丈夫だよね?」
カンナが注文を取ってくれる。

「あっ、ウーロン茶でいいかな。お酒全然飲んだこと無くて…。椎菜ちゃんどうする?」

「私もオレンジでいい。」

立食しながら、椎菜とカンナとおしゃべりに花が咲く。

「あの、一橋さんだよね?」
不意に声をかけられて振り返る。

「俺は田中でこっちは佐藤、覚えてる?」

「えっと……サッカー部の?」

「そうそう。覚えててくれたんだ!嬉しい。」
2人は何故か肩を叩きながら喜んでいる。

「一橋さんって高校の時高嶺の花でさ。
俺ら声かけ辛かったんだよねー。お兄様もなんか見てるだけで睨まれたしさ。」
そんな事あったの?

「全然、ちょっと人見知りなだけで話しかけてくれたら普通に話したよ?」

そんな風に思われてたんだ…と、花は初めて知る。

「一橋家って言ったら格式高い感じするし、お嬢様イメージが強かったからさ。
なんだ…もっと話しかけとけば良かった。」

男子2人女子3人でしばらく話しが続いた。

「花、楽しんでる?」
 そう言って、後ろから詩織が様子を見にやって来た。

「お酒飲んでないか偵察しに来たよー。」

そう言う詩織はお酒のせいかいつもよりご機嫌だけど…。

「飲んでないよ。柊君が迎えに来るから絶対飲めないよ。」

「さすが柊様、抜かりないなぁ。じゃあ、花は二次会行かないんだね。」

「えっ、行かないの?みんなで行こうよー。椎菜さんは行く?」
田中君がそう言って誘ってくれる。

「私は行ってみようかな。花ちゃんは?」

「ごめん、私は行けないよ。お兄ちゃんうるさいし。」

そう言って断る。

田中君と佐藤君の2人はその後も、二次会に行こうよ、と何度と無く誘ってくれたけど、丁重にお断りした。
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